訪問日:2021/2/23
全国的にも珍しい馬頭観音が渋川にあると知ったのは、図書館で群馬県の石造物という本をペラペラめくっていた時だった。
これは是非とも見てみたい。今すぐ見に行きたい。こうしちゃおれんと猛り立ち、息を巻きながら図書館を退館して車のキーを捻った。そのまま普通に自宅へ帰り、実際訪れたのは約1年後だった。
馬頭公園は渋川市石原の住宅街の只中にある。
入口の車止めは馬の蹄鉄の形をしてあり、馬頭観音というより馬そのものが連想される。
園内には石仏もたくさんある。左から地蔵・地蔵・地蔵・馬頭観音・馬頭観音。写真の他にも庚申塔が数基見られた。
一番奥には大きな石祠が建立している。
切石の基壇上の腰高の台座には宝形造の石祠乗っていて、その中に石造の馬頭観音像が安置されている。
馬頭観音は享保13年(1728年)に建立され、この馬頭公園の中心的存在である。
基本的な馬頭観音の姿は、「馬の頭を乗せている」「顔が3つ」「腕が8本」「怒った顔」が特徴とする。
こちらの馬頭観音には腕が12本あり4本はサービスだ。
そして石祠の周囲には四体の石馬が寄り添っている。この石馬が見たくて私はここまで訪れた。
先頭の二体は状態が良好でお目めぱちくり愛らしい。後方二体は少し小さく、摩耗や欠損が見られるが馬と判別できる容像を維持している。
競走馬のような長い脚の馬ではなく、短足のお姿はリアルな日本原産の馬の姿だろう。
本来の馬頭観音は畜生界を済度する役割を持ち、馬が草を食べるように煩悩を取り払うをされている。
民間信仰に至っては頭上に馬の頭を乗せた容像から、馬の守護、農耕の守護・交通安全などのご利益があるとされ、庶民にとっては身近な信仰対象であった。
「子供の頃にこの石馬にまたがって遊んだ」というエピソードも伝わり、ここの馬頭観音がいかに身近な存在であったと知らしめてくれる。私も馬に跨ってみたかったが大人だから我慢することが出来た。
この付近はかつて三国街道の沿線であり「馬頭峠」とも呼ばれていた。
当時の馬は農耕や交通において不可欠な存在であり、人々からは家族同様に大事にされていた。
そんな背景から馬頭公園の馬頭観音は馬の供養の為に祀られたと伝わるが、民間信仰でこれほど立派に祀り、石馬まで引きつれた馬頭観音は今までに見たことがなく非常に興味深い。
説明版では「石馬を従えた馬頭観音」などとまるで馬は従者のような記述だが、私はこの石馬も馬頭観音であり神様仏様であると考える。
むしろ馬頭観音の姿ではなく飾り気の無い馬そのものの姿に、民衆の大切な馬に対する愛情と深い感謝を思わせる。
とても良いものを見ました。
石仏巡礼はまだまだ続く。
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