訪問日:2018/9/16
南牧村にはかつて三つの温泉が存在した。
一つが「勧能温泉」、そして「熊倉温泉」、そして今回紹介する「星尾温泉」である。
これら全ては冷鉱泉であり加温を必要とするが、かつては宿泊施設も有し大層賑わったと聞く。
まず、三つの温泉の歴史を簡単に紹介する。
「勧能温泉」
南牧村では最も近年まで営業していた温泉であり、近隣の方にお話を聞くと最盛期には宿の部屋が足りなくなるほど賑わい、近隣の民家の一角を宿泊者に貸し出していたと言う。宿は20年程前に廃業したが今でも勧能集落に「玉生舘」と書かれた旅館の廃墟が存在する。
「熊倉温泉」
南牧村最奥地の熊倉温泉は象ヶ滝の滝壺近くの岩盤から湧出し、明治8年頃には旅籠屋で使用され旅人の疲れを癒したと記述がある。鉄道が発達し余地峠の往来が無くなると共に寂れていった。筆者は確認していないが温泉口の下流150mに旅籠屋跡の石積みが残されているという。
「星尾温泉」
炭酸カルシウムを多く含む源泉の沢には、木の葉石と(枯葉石とも)呼ばれる炭酸カルシウムが石に付着した木の葉を凝固する珍しい様子が見られる。地元の人は源泉を塩水とも呼び、パンや饅頭の発酵作用を有するほか眼病にも効くと伝わる。
宿泊施設は戦後間もなくして廃業となるが、その後家庭や吉祥寺などで限定的に使用され、数年前まで星尾の集落内に鉱泉を貯めておくタンクがあったがいつの間にか無くなっていた。
上記の通り、かつて賑わった南牧村内の温泉も今では全てが廃業している。
しかし近年、この廃業した温泉を復活させようと熱意ある有志たちが立ち上がった。
復活した温泉は星尾集落にある「星尾温泉 木の葉石の湯」。
昭和25年に廃業してから68年の時を経て、2018年9月8日、遂に復活を果たした。
温泉の廃業はよく聞くが温泉の復活とはあまり聞かない事例であり、その情熱を持った有志たちには尊敬の念を抱くばかりだ。
温泉施設は既存の古民家を改修して作られた。
リフォームや浴室工事など、その殆どがプロジェクトメンバーのよる手造りによるものである。
(ちなみに私はただの南牧村マニアであり、プロジェクトメンバーとは一切無関係です)
しかしながらこんな山奥に温泉とは、大丈夫だろうか・・。
実際来ると分かるが南牧村でもだいぶ奥の方なので交通の便は最悪の部類。
私は南牧村の中でも星尾の景観が一番好きなので頻繁に来ているが、正直余程のマニアじゃないと訪れる場所では無い。
秘湯マニアには願っても無い場所だろうが。
さて、オープンしたと聞いて居ても立ってもいられなくなり、私も入ってみようと早速訪れた。
車を駐車場に停め、玄関に入るとスタッフの方がにこやかに迎えてくれた。
少しお話をしたのち、いざ温泉へ。
木の香りが漂う真新しい浴室。
これを全て手作りとはすごい手間だろう。
細かい所を見れば粗はあるがおおむね綺麗に作られていた。
温泉は冷鉱泉を加温し掛け流しで使用。
薪ボイラーは常に薪の投入をしなきゃならないので大変そうだ。
泉質はナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩・塩化物冷鉱泉。塩気のある茶褐色の湯が情緒を誘う。
穏やかな日差しと共に窓からは緑が差し込んでくる。
静かな山奥でのんびり湯に浸かるひと時、そして文献上でしか知らなかった星尾の湯に現代になって入浴できる喜びは筆舌に尽くしがたい。
尚、環境保護の為に石鹸・シャンプーの使用は禁止となっているのでご注意を。
風呂から出てロビーで休憩。
美味しい水を飲みながら、スタッフの方が出してくれた南牧村の紹介ビデオを眺めていた。
食事も提供しているとの事で次回は食べてみようと思う。
星尾温泉は住民たちの憩いの場所の他、村民と村外民との交流の場所としても活用していくビジョンがあるようで、今後も南牧村の文化の一つとしていつまでのここ在り続けて欲しいと思う。
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