訪問日:2021/6/12
草津の山奥には常布の滝という大層立派な滝がある。
そして常布の滝の下流にも小さな滝があり、その滝の裏に隠されるように温泉が湧いていると言う。
その野湯の名は「常布の滝下温泉」と呼ばれる。
かつて私は仲間たちと常布の滝下温泉を探しに行ったものの、野湯までの道は無く、深い藪をかき分けて沢まで降り立つも発見に至らなかった。
いつか幻の野湯に浸かりたいと何年も思いを馳せていたが、会社の先輩のお父様が常布の滝に行くというので私もご一緒させていただく事になった。
草津から芳ヶ平方面の遊歩道を歩くが、出発地点により所用時間が異なる。
我々のルートは林道のバリケードから1時間弱歩いて常布の滝展望台に到着した。まずは目の前に聳える巨大な滝を目指し、その後で野湯を探したいと思う。
※地図は一番最後に載せます。
展望台から数分進むと常布の滝の分岐路が現れる。
このコースは岩場が多く元々から上級者向けであったが現在では土砂崩れにより遊歩道が崩壊し廃道となっている。言わずもがな自己責任です。
ここから常布の滝までは0.72km、遊歩道が万全なら30分程度で到着するが広がるのは深い笹薮。とは言え、お誘い頂いたクーパーさんの案内と、先人の踏み跡とピンクテープのお陰で迷うことなく歩けた。
私は2014年に初めてこの地を歩いた。当時は踏み跡が全く無く、深い藪を掻き分けて沢まで直下したが天気の急変により撤退した苦い記憶を持つ。なので現在の拍子抜けするくらい歩きやすい道に驚きを隠せない。
こちらも初探索時の嫌な思い出だが、微かな踏み跡を遊歩道跡と思って歩いていたら岩の窪み付近で非常に強い獣臭がして、どうやら熊のねぐらに辿り着いたようで慌てて逃げ出した記憶がある。この山域は普通に熊が出るのでマジで注意です。一人では絶対に行かない方が良いです。
ピンクテープに助けられながら進むと遊歩道の当時の遊歩道の残骸が出てきた。
廃道の原因になったと思われる土砂崩れポイントもロープが張ってあるので心配なく歩けます。
とは言え歩きにくいことには変わらないので万全の装備は必須です。
遊歩道の分岐から約一時間、いよいよ常布の滝が見えてきた。
一同に活気が満ち歩む足は早くなる。
滝の周囲の沢は鉄分と硫黄分を豊富に含み、足元は泥のように見えて錆が堆積したよう固くなっていた。足裏に不思議な感覚が広がる。
滝の岩壁は黄色のモフモフした見た目の硫黄のつららが垂れ下がっている。普段見る滝とは全く違った異様な光景だ。
そして遂に、念願の常布の滝を目の前にする。
大、大、大、大迫力です。
一番の目的は野湯であるが、壮大な滝を目前にして途方もない達成感が充満していく。轟音と水しぶきを身体に浴びて一同感動し歓喜に湧く。
鉄分の茶褐色と、硫黄分の黄色と、チャツボミゴメの緑で色彩が豊かだ。
この滝を間近に見ただけでも来た価値があります。
!?
滝写真家ののんのんさんが服が濡れるのをお構いなしに滝壺に入りだした。
何をやっているんだ。服はビチャビチャだし、テンション上がりすぎだ!
そんな姿を眺めてたら私もムズムズして正気を失い、気が付いた時には全身で滝を感じていた。
そして二人で修行して遊ぶ。落差40mの水撃はすっげぇ痛い。
さて、滝も良いが本題の野湯探しだ。
しかし皆はまだ滝の写真を撮ると言うので、私は単独で野湯を探しに行くことにした。
沢沿いを降りて野湯を目指したが小さい滝が連なり案外歩き難い。
結論から言うと、来た道を戻れば野湯までの踏み跡がピンクテープ付きを発見できるので沢は降りない方が楽。
常布の滝から沢沿いに約30分下って遂に野湯を発見した。
常布の滝下温泉は、写真で指差す小さな滝の裏にある。
飛沫を浴びながら滝の脇から顔を突っ込むと念願の湯が現れた。
滝の裏は洞窟状になっていて、岩から染み出る温泉が足元の窪みに溜まって天然の湯舟になっている。
泥や草木が溜まった汚い湯とも表現できるが、私にとっては茶褐色の鉄分豊富な効能豊かな極上の湯。
手を突っ込むと結構温かい!
事前情報では温水プール程度の温度と聞いていたが夏場で38℃くらいはある。
泉質は酸性硫黄泉、同じく草津の野湯の香草温泉と比べると硫黄分が低く、舐めた感じPHもそこまでは低くない。これは沢水が混入しているからだろうが、感覚的には川原湯温泉のPHをちょっと低くしたような印象。
カメラが濡れるのもお構いなく自撮りするが、ヤバイほど笑顔なので全モザでお送りします。
カメラを外に避難させてからもう一度ゆっくり浸かる。
意外にも湯舟は深く肩まで沈めることができ、泥交じりの湯が疲れた身体を優しく包み込んでくれる。
目の前で絶えず繰り広げられる水のぶつかり合い、その轟音が洞窟内を駆け巡って全身を突き刺さる。
その浮世離れした光景に心が震える。
一体何なんだここは。極楽か、地獄か、定かではないが最高級の秘湯であることは間違いない。感動、ただただ感動に浸る。やっと出会えた幻の野湯に身を沈めて満足するまで時を過ごした。
皆とは展望台で習合する予定。
沢を遡行せず、そのまま遊歩道に復帰する。
ちなみに遊歩道から常布の滝まで行かず直接温泉に行く場合は写真の倒木に沿って沢に降りるように。
そして無事に皆と合流し下山、頂いたキンキンのノンアルビールで乾杯。
勝利の美酒は美味い。
常布の滝も常布の滝下温泉も、また来たいと思わせる最高の場所だった。いつかまた来よう。
アクセスは地図の通り。
バリケード近くの路肩に車を停められるがジムニーや傷が付いても構わない四駆ならもうちょい車で接近する事も可能。
常布の滝下温泉拡大図。
滝から野湯は沢沿いを歩かず踏み跡のある遊歩道を歩くのが吉。
群馬B級スポット トップページ