訪問日:2014/6/29
もんじゃ焼きと言えば東京の下町を連想するが、群馬県では馴染みが薄く、私は県内でもんじゃ焼きを食べた事は一度も無い。
しかし伊勢崎市では古くからもんじゃ焼きが好んで食べられ、それらを「伊勢崎もんじゃ」と総称し、近年より観光資源として積極的に売り込んでいる。
なぜ伊勢崎市でもんじゃ焼きが食べられているのか、
いせさきもんじゃ公式ホームページ
から掻い摘んで要約すると、「東武伊勢崎線を使った織物貿易の際、東京下町出身の貿易商が伊勢崎の地でもんじゃ焼きを広めた」との事。
昔を知る伊勢崎市民の認識では、「もんじゃ焼きは駄菓子屋で食べる物」として、かつて駄菓子屋には必ず置かれていた鉄板で、子供たちを中心におやつ感覚でもんじゃ焼きが食べられていた。
しかし時代は流れ、数十年前は至る場所にあった駄菓子屋は、少子化の影響やコンビニの台頭で年々姿を消していき、今尚昔ながらのもんじゃ焼きが食べれれる駄菓子屋はすっかり少なくなってしまった。
「サッちゃんち」「しんちゃんち」と呼ばれる2軒の駄菓子屋は、今も昔ながらのもんじゃ焼きを食べる事ができ、夕方は子供たちの元気な声で賑わっている。
今回私は「サッちゃんち」へ訪れ、伊勢崎もんじゃの本場の味を食べに行った。
まず初めに断わっておきたいのが、ここは”地元民の為のお店”という事。
ここは駄菓子屋であり地元の子供たちが立ち寄る小さなお店、店内の鉄板は一枚のみで、余所者が大勢押しかけてもそれを捌けるだけの容量を持ち合わしていない。
地元民優先を心がけ、先客が居たら入店を見送るのが良いと思う。
また、平日は子供たちで賑わうため、大人のもんじゃの注文はお断りしているとの事。
それでは入店。
昔ながらの駄菓子屋。
初めて来たお店だが懐かしさを感じる店内。
単価10円20円のお菓子が並べられる。
100円を握りしめ駄菓子の組み合わせにあれこれ思案した小学生の頃を思い出す。
と、ノスタルジックに浸ってしまったが、本来の目的は伊勢崎もんじゃを食べる事にある。
店内の隅に一枚の鉄板が置かれ、壁にはメニューが掲示されていた。
写真を見ると分かると思うが、トッピングや味付けを幅広く選択でき、同時に価格も複雑に変動する。
この自由度の高い複雑なメニューを攻略する事によって、子供たちは金勘定を学び成長していくのだろう。
また、壁にはルールやマナーが細かく書かれている。
こうして子供たちは道徳を育み社会を学んでいく。
うーん、こういう店は大事だよなぁ。
機械的なコンビニには売ってない物が手に入る。
基本的な注文は「もんじゃの種類」と「味付け」を選ぶ。
もんじゃの種類は「おやつもんじゃ」「ふつうもんじゃ」「スペシャルもんじゃ」があり、おやつもんじゃは子供限定、
スペシャルもんじゃはふつうもんじゃに比べて具沢山。
味付けは「ソース味」「カレー味」「あまから味」「あま味」「大あま味」から選べ、大あま味は別料金のオプションとなる。
別料金でトッピングを追加して自分好みにカスタマイズすることも可能。
味付けのあま味とは何ぞや?と思うかもしれない。
あま味とは、もんじゃの種にいちごシロップが入ってる甘いもんじゃ焼きの事で、伊勢崎もんじゃの大きな特徴として挙げられる。
他の地域では見られない特異な味付けは、駄菓子屋ならではと言えよう。
サッちゃんに注文を伝え、ちょっと待つ。
来ました!
左から、
スペシャルもんじゃ - ソース味(360円)
ふつうのもんじゃ - カレー味(260円)
ふつうのもんじゃ - 甘味(260円)
まず思うのが、破格の安さ。
普通の店に行けば2~3倍の料金での提供になるだう。
子供たちもこの安さで外食とあれば楽しい事間違いない。
持ち帰りで種だけ買うのも可らしく、持ち帰りのお客さんが何組か見えた。
帰って自宅のホットプレートで気兼ねなく焼くのも有りだな。
鉄板を囲い、準備万端。
サッちゃんは「私はいちいち手を出さないから勝手にやってちょうだい」とぶっきら棒に言うものの、焼き方のコツや美味しい食べ方など、忙しそうなのに何かと世話を焼いてくれた。
地元に愛される理由も分かる。
鉄板の中央の黒い部分しか火が強くない。
何故かと鉄板の下を見ると、なんと七輪!
最初はなかなか温まらなくて準備が大変らしい。
焼く。
器から鉄板に種を直接ぶちまける。
土手を作らないのかと疑問に思う人もいるかも知れないが、これが伊勢崎流。
鉄板を大勢で囲いそれぞれが自分のもんじゃを食べるとなると、一人分のスペースが小さくなってしまう。
そのため、少し焼いては食べる、と言う食べ方が伊勢崎では一般的になっている。
近所の子供たちは小遣い持ってここへ来て、仲間と鉄板を囲んで下らない会話に花を咲かす。
これもまた良い思い出として将来大きな宝物になるだろう。
そんな少年時代を過ごした近所の大人たちも、少年の頃の懐かしの味を求めにサッちゃんちに訪れる。
大人から子供まで年齢を問わず「懐かしの味」と言える伊勢崎のもんじゃ。
いつまでも変わらない味。
伊勢崎もんじゃ最大の特徴である、いちごシロップ入りの種。
食べると予想以上に甘い。
また、焼くと砂糖が固まりベッコウ飴のようになる。
美味しいんだけど、こりゃ子供用の味付けだな。
しかしこの甘さが伊勢崎流。
個人的にはソース味かカレー味の方が好みだな。
美味しいし安いし大満足。
もんじゃを平らげた後、一番人気のビンサイダーを買った。
1本90円で、これもまた懐かしの味。
子供向けに「王冠投げて箱に入ったら駄菓子プレゼント」なんてサービスをやっているらしい。
サービスが良いんだか、商売っ気が無いんだか。
最初にも書きましたが、地元の方向けの小さなお店なので「地元民優先」を心がけるようお願いします。
2015年2月追記
群馬を中心に展開する「お好み焼き・もんじゃ・鉄板焼きの専門店、KANSAI」に行ったら、メニューに伊勢崎もんじゃが入っていました。
味は「甘」「辛」「甘辛」「ソース」から選べて、実際食べてみると駄菓子屋で食べる本場の伊勢崎もんじゃと非常に近く、価格も189円からと本場に準拠した設定でした。
駄菓子屋では食べ難い人は、KANSAIで試してみてはいかがでしょうか。
参考サイト
KANSAI - もんじゃ焼きメニュー
群馬B級スポット トップページ