訪問日:2015~2017年
町の中心を流れる鏑川沿いの段丘面に集落が発達した下仁田町、
町面積の大部分を占める山林から湧き出る豊かな水がいくつもの沢となり鏑川に合流する。
このような地理的特徴から生み出される土木建造物と言えば「橋」である。
下仁田町では橋の数が多く、規模を問わず様々な個性的な橋が存在する。
そんな訳で、今まで撮り溜めた下仁田の個性的な橋梁をこの度紹介したいと思う。
尚、地名に誤りがある場合はご容赦願いたい。
馬山の石淵橋
個性的な橋の前にまずは王道的土木遺産、ここは馬山から白山を繋ぐ石淵橋。
国道254号に掛かる巨大な鉄筋コンクリートアーチ橋は、昭和16年製、橋長56m、幅員5.5mであり、群馬県で最長級のコンクリートアーチ橋と言われる。
コンクリートアーチ橋は下仁田町や南牧村で比較的多く見られ、それほど珍しくもない。
形状は開腹式上路アーチ、やはりこの形状の美しさは目を見張るものがある。
手前の歩道橋が邪魔でアーチが見えにくいのは残念ポイント。
横間の旧天神橋
横間から深山を繋ぐ天神橋。
橋梁巡りの楽しさは、このように隠れた旧橋を見つける事でもある。
国道254号に掛かる天神橋の脇を見ると、素朴なコンクリートアーチ橋が顔を出す。
上記の石淵橋と同じく、鉄筋コンクリートの開腹式上路アーチ。
欄干の砲弾形の彫りが特徴的。
新天神橋には歩行者用の幅員が確保されているため、旧天神橋は今では殆ど使用されていないだろうが、歩行は問題なく行えた。
旧上野鉄道鬼ヶ沢橋梁
さて、この辺から個性的になってきます。
ここは下仁田と富岡の境界の鬼ヶ沢に架けられた鉄橋。
この橋は明治30年に開通した上野鉄道(高崎-下仁田)の鉄道橋であり、
かつては軽便鉄道がこの橋を通って下仁田へ向かっていた。
大正13年の電化・広軌化に伴って鬼ヶ沢橋梁は廃止となるが、近隣住民の生活道路として使用されていた事により今も撤去されず残されている。
近代産業遺産として歴史的価値が高い。
桁はブレートガーター、橋台はなんと煉瓦造り。
橋台の隅は頑丈な南牧村産の椚石が組み込まれている。
全長10m、幅1m、高さ10.7m
軽便鉄道が通っていた往時の写真が現地に掲示されており、なかなか迫力があった。
馬山のZ橋
追記:2019年10月の台風で消失しました。現在はH鋼の桁橋になってます。
馬山小学校の近くの小さな橋。
素朴でいてお洒落な容姿はなんとも可愛らしい。
名前は無いが、形がZなのでZ橋と呼ぼう。
特筆すべきは橋脚の形状だろうか。
上方は型枠組んでコンクリートの打設跡が見られるが、下部は大胆に川石がコンクリートで固められている。
川石で石垣を組んだようには見えないので、コンクリート基礎に装飾用に川石を埋め込んだと思われる。
かなり個性的な形状である。
H鋼を桁とし、上部に角材を敷き詰め路面とする。
どこかの集落を繋ぐわけでもないので現在はほぼ使用されていないだろう。
橋自体は頑丈で何の不安もなく渡れた。
馬山の木造橋
追記:2019年10月の台風で消失しました。現在はH鋼の桁橋になってます。
Z橋の近くで見つけた木造橋。
橋脚も橋桁も全て木造の珍しい橋。
地元の人に話によると、今では対岸に住む一軒の住民しか使用していないが昔はゴルフ場へ続く道があったという。
橋桁の脇に謎の2本の丸太が敷かれていた。
旧橋の名残か、配管とか通っていたのか・・。
橋脚は複雑というか無理矢理感が満載で、桁に対して傾き補強は簡素。
脇の丸太も一緒の橋脚で支えているので、橋を架け直す時に旧橋も記念に架けたか・・。
(※旧橋を撤去せずに脇に据えたまま新橋を架けるパターンを結構見かける)
桁を構成する丸太同士は長ボルトで連結されているだけ。
ちょっとこれは危ないなー。
謎の石造アーチ橋
車でこの橋を通った時に「すげぇもん見つけちまった」と鳥肌が立った。
おお、石造アーチ・・!!
すごく立派な橋。
橋名板が無いので名前が分からないのが惜しい。
車が通る橋にしては天端が薄すぎる気がする。
石造アーチに見せかけた桁橋だったり・・?
とは言え、こんな個性的な橋が平然と山村に潜んでいるのだから面白いもんである。
ちなみに、迷子になった時に偶然発見した橋なので場所は不明。
取り敢えず下仁田なのは間違いない。
旧落合橋
2014年5月、廃道の神サイト、
山さ行がねがに衝撃的なレポートが投稿された。
「群馬の山ん中に、マジで、すっげー橋が現存してたぞ!」
と、紹介された下仁田の旧落合橋、存在すら知られていなかったその橋梁は一夜にして脚光を浴びた。
そして私も一目見るため訪れてみた。
旧国道の落合橋から欄干を眺める。
木々が生い茂る鬱蒼としただけの景色だが、目を凝らすとあるものが見えてくる。
!!!!???
長年、人知れず佇み続けた旧落合橋。
分かるだろうか、なんとこの橋、木造トラス!!
日本で現存する木造トラス橋は極めて稀な例であり、超絶貴重な土木遺産だ。
無知な私が講釈垂れるのは些か荷が重い。
ここはヨッキれん氏のレポートを是非読んでほしい↓
橋梁レポート 国道254号旧々道 旧落合橋 前編
路面は草木に覆われている。
建設後、50年は経とうかという木造橋、老朽化著しく渡れる気はしない。
橋台から撮影。
この世の風景とは思えないほど美しい。
木造トラスの幾何学模様。
この橋に多くの言葉は要らない。
ただただ美しい。
と、そんな感じで下仁田の個性的橋梁巡りはひとまず完とする。
このように下仁田は圧倒的に個性的な橋が多く、道路マニアが興奮するような町だ。
まだまだ下仁田を行き尽くした訳じゃ無いので、今後面白い橋があったら都度追記しようと思う。
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